一線で働く医療業界人の本音を訊く!vol2-ブロガー薬剤師編-(後編)

ブロガー薬剤師編の最後は薬剤師の未来を語っていただき、これからの薬剤師への激励もいただいた。(訊き手:小原一剛)(執筆者:小原一将)

薬学部は4年制でしたが今は6年制になった。今の薬剤師の質は上がっていますか?

ネット環境が当たり前になって、論文やガイドライン・企業ページ・ブログなどから情報を仕入れられるようになったり、臨床試験やエビデンスの捉え方をきちんと学んでいたり、情報の扱いに長けていると感じています。それに、薬剤師の地位を高めようとしている人が多いと思います。

薬の数や種類は増えているので勉強もたくさんしなくてはいけないし、学校では「チーム医療で役立つように勉強しろ」と言われている。だから「勉強するのが当たり前」という雰囲気ができている。それなのに、職場ではこうした雰囲気が弱くて、「あれっ、勉強ってやらなくて良いんだ」と思ってしまうのはもったいないです。

そういう人たちに頑張っている薬剤師は全国に居るんだぞ、ということが届けば良いなと思ってWebでの活動を続けています。

 

児島さんも実際の薬局で働き色々なことを考え、そして周りの薬剤師の意見も聞きながら今の活動の形にたどり着いたようだ。職場の雰囲気を変えることは難しいが、そういった薬剤師の受け皿をまず作るというのはとても良いことであると考える。

 

先の時代に薬局はあると思いますか?ドラッグストアとかで済ませる人も多くなって薬剤師の働く場所が減ってきているのではと思います。薬局の地位を上げなければならないのか、それともドラッグストアだけで代替されるんでしょうか。

薬の副作用や相互作用で不利益を被る人を減らすことが最終目的なので、それに大きく貢献するのは薬剤師でもAIでも良いです。

極論、薬に対して全て完璧で的確な判断ができるAIがあれば薬剤師は要らなくなるかもしれません。でもその時は内科医も要らなくなっているかもしれないし、そもそも患者全員がそのAIにすんなり従う訳でもないですよね。

そのAIを補完する、AIとは違った選択肢を提案できるような存在として、薬の専門家たる薬剤師は必要だと思います。

なるほど、うまく共存することが大事のようですね。薬剤師の方たちの中で危機感を持っている人は多いですか?

持っている人も多いです。簡単な服薬指導や在庫管理はAIで良いですね。むしろ今すぐにでもAIに替わってもらいたい。そうすれば、「楽になった!」ではなく、薬剤師はもっと別のことにエネルギーを集中できます。

でも、例えば腕が不自由で吸入器具を操作しづらい人とか、子どもがきちんと薬を飲んでくれなくて困っている母親とか、そういった個別対応が必要な場合には、まだまだ薬剤師が対応しなければいけないと思います。

 

完璧なAIが出てきても大丈夫だろうと楽観視している医療者も多いだろうと思います。私は医師の数は減ると考えていますし、良く仕事の出来る医者はとても稼ぐ、反対は稼げない。薬剤師も同じですかね?

そう思います。機械をうまく使う薬剤師と、機械に使われる薬剤師になるのではないでしょうか。

同じことをしている人は同じ給料というのが今の医療ですが、格差が出てくると。

個人的にはそう思います。雇われ方から変わるでしょう。処方を組み立てるような人と、調剤だけする人とみたいな感じで分かれる。

最終的にはどのようなものが理想ですか?

AIが登場した先は分かりませんが、さっき言ったように医師の「そこまで細かい薬のことまでは分からない」というところをすかさず拾える薬の専門家、自分の中ではそれを目指しています。

薬剤師なら薬の薬理学だけでなく、製剤学や動態学、それに構造式と化学反応なども学んでいるので、こうした色々な視点から薬のふるまいを推測できます。それらをもとに、医師に処方提案などをしていけたらいいなと。

そのためにブログを書いたり、本を書いたりされているのですね

 

 

薬剤師の地位は今後上がりそうですか?

6年制になって偏差値が下がってダメになるかと思っていたらEBMなどの基礎を叩き込まれてくるので、地位向上に繋がると思います。

ただ、AIとか以前の問題として国民皆保険が心配ですね。

薬学生の質は今のところ問題ないけど、医療における薬剤師の立場が危ない?

医療費が増え過ぎて国民皆保険や今の医療が崩壊してしまう恐れもあります。崩壊まで行かなくても、医療費削減で薬局の売上が減れば、薬剤師は会社のため、不本意でも水素水のような商品を売ってでも売上を伸ばさないといけなくなる、なんてことにもなりかねません。経営者がそういう方に舵をとってしまうと困ります。それまでに何とかしないといけない。

 

これから薬剤師になろうとしている学生や、現在働き始めている新人薬剤師の方たちに一言お願いします。

薬剤師は当たり障りのない服薬指導をすることや、医師が処方した薬をただ飲ませることが仕事ではありません。例外がつきものの医療において、医師が医学的な視点からではどうしても取りこぼしてしまう100人に1人の患者を、薬学的な視点から救う。そして医師と協力して100人に1人を1,000人に1人、10000人に1人と減らしていくことが仕事です。そのためには、医師に「現状よりちょっとマシかもしれない選択肢」を提案できるよう、勉強しなければなりません。

社会に出て、周りに勉強している薬剤師がいない等の不安や孤独を感じたら、ブログやツイッターで情報を発信している薬剤師を探して欲しいと思います。また、「AHEADMAP」という団体もあります。これはインターネットで論文抄読会を配信していたり、EBMに関する実際のワークショップなども開催したりしている法人で、全国の勉強熱心な薬剤師がたくさん集まっています(※認定薬剤師の単位も発行できます)。私も参加していますので、興味があれば声をかけてもらえたらと思います。

向上心を持って、一緒に勉強していきたいですね。

 

薬剤師の地位を上げるためにはもっともっと勉強してほしいという熱い思いが伝わった。それと同時に、児島さんが理念として掲げている「誤解や偏見から生まれる悲劇を、正しい情報提供と教育によって防ぎたい」というところから、AIなどに役割が置き換わっても構わないという意外な意見も飛び出した。

このサイトに掲載してある他の記事でも述べているように、私は薬剤師という存在価値を現状はほぼ認めていない。それは、医療という守られた領域で自分たちの主張を自分たちで満足しているような人たちばかりを見てきたからだ。

しかし今回のインタビューで、現状で出来ることを一つずつ発信している薬剤師の人たちがいることを知った。このような人たちはぜひ仲間を増やし、薬剤師同士ではなく患者や社会の同意を得られるようにどんどん活動を続けてもらいたいと願う。

 

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